バイト潜入を嫌がるまひろに対し、夏目は「殺し屋ってマルチスキルが求められる業種なのでは?」「殺し以外のスキル磨かないと、将来困りますよ。将来のこと、考えていますか?」と厳しく責め立てます。

 そんな世間一般の常識に縛られるのが嫌で、殺し屋になったのに、この裏社会でも社会人として常識やルールを求められることに、まひろの脳内はブラックアウトしてしまうのでした。付き合いの長いちさとは、まひろの性質をよく理解しているので、その場を取り繕うわけですが。

 まぁ、特定のスキルには自信があるけど、営業活動や上司たちとのやりとりは面倒……という人はZ世代に限らず多いんじゃないでしょうか。

仕事を終えていただく「まかない飯」の美味しさ

 イヤイヤながら始めた居酒屋バイトでしたが、お店の雰囲気はアットホームで、店長(田中俊介)や先輩スタッフのベジータさん(二ノ宮隆太郎)、マユさん(海津雪乃)も温かい性格です。バイト初日からホールを切り盛りしているちさとに対し、まひろはオーダーを覚えられず、生ビールもうまくジョッキに注げずにいます。ちなみに、バイト中、ちさとは「とってぃー」、まひろは「ピー助」というニックネームで呼ばれます。

 失敗の連続で落ち込む「ピー助」まひろに対して、ベジータさんは「僕も1年間くらい本当に使えないヤツだったんですよ」と優しくフォローするのでした。働いた後にいただく「まかない飯」がすごく美味しそうです。とりわけ、「とってぃー」ちさとは店長が作った「まかない親子丼」が気に入り、「今度、レシピを教えてください」と頼むのでした。

 ちなみに、このベジータさん役の二ノ宮隆太郎は、個性派俳優として単館系の映画にちょくちょく出演している他、映画監督としても活躍中で、独特な佇まいが北野武監督を連想させることから「リトル・タケシ」とも呼ばれています。

 店長役の田中俊介は、第2話を担当した平波亘監督の『餓鬼が笑う』(22年)の主演俳優。女子バイト・マユ役の海津雪乃は「可愛すぎるビールの売り子」として話題になり、Netflixドラマ『地面師たち』の最終話にもちょい出演したグラビアアイドルです。お客役で『止められるか、俺たちを』(18年)の山本浩司も出ていました。第2話だけのゲスト出演がもったいなく感じられる、贅沢なキャスティングでした。