◆古き佳きものに家族の好みやアイデアを

『セゾン・ド・エリコ』Vol.19
ソファのある二つのコーナーからなるサロン(リビング)
──3年以上を費やしての改装。どのように進んだのでしょう?

中村:建物自体は古いのですが、逆に至るところに、いまではもう作ることができないような細工や意匠が施されていて。

 また、アンティークの家具や特注の調理レンジなど、先々代の持ち主の方のこだわりもたくさん残っていました。それらを活かしつつ、家族が心地よく過ごせるようにしたいと考えました。

──具体的に手を加えたところは?

中村:まず空調や水回りの設備を整えて、室内は壁の色や照明のかさの色を明るく塗り替えました。モダンなカーペットを敷いた部屋もあれば、木組みのよさを活かした場所もあり、友人のインテリアデザイナーの方の力を借りて一部屋ずつ進めました。

 3人の子どもたちの部屋はそれぞれ南仏ゆかりの3人の画家の壁紙を貼りました。ザラホームのシンプルなアイテムやパリの自宅で使わなくなったものも、うまくマッチしたように思います。

 元々ここにあった古い椅子も、造りはとてもしっかりとしていたので、好みの布地に張り替えてもらいました。南仏の昔ながらの職人さんたちの知恵や技術にずいぶん助けられたと思います。

◆いま55歳。これからの願いは……

『セゾン・ド・エリコ』Vol.19
光と風がたわむれる庭で
──改装や修理は、もう終わったのでしょうか?

中村:夫は時間があると、というよりは用事を見つけてはこの家に通い、思いついては手を入れていて、まだまだ現在進行形です。もっとラグジュアリーだったり、現代的だったりするものがお好きな方もいらっしゃると思います。

 でも、代々の持ち主が愛してきたこの家に、わが家ならではのアイデアを加えて心地よく温かい空間にしたいと思っています。家族にとって、そして訪れてくださる友人たちにとって、唯一無二の魅力がある場所にできればと…。

──いま55歳の江里子さん。この家での将来の夢は?