日本での活躍後、現在は生活の拠点をパリに置くフリーアナウンサーの中村江里子さん、55歳。ラテン民族のDNAなのか(笑)、陽気でエネルギッシュな夫のバルトさんと20歳、17歳、14歳の一男二女の子どもたちとの明るくにぎやかな暮らしぶりが共感を呼んでいます。

『セゾン・ド・エリコ』Vol.19
門扉の前の中村さん
 新刊のムックでは、南仏のコート・ダジュールに52歳のときに購入した家のことが紹介されています。

 パリでは長らく賃貸のアパルトマンに暮らす中村さん一家が、なぜこの地に家を求めることになったのか、家との出合いから、現在までを中村さんにうかがってみました。

◆運命的な出合いを感じた500年前の家

『セゾン・ド・エリコ』Vol.19
塔のある部分の建物が1523年の創建。徐々に周囲に増築されていまの形に
──そもそも、どうして南仏に家を持とうと思ったのでしょうか?

中村江里子さん(以下、中村):2020年のコロナ禍にフランスでは外出規制が始まりました。南仏は夫のバルトさんの生まれ故郷で、当時健康状態に不安があった義父母に、なにかあったときにはサポートできる距離にいようということで、着のみ着のままに近い状態で南仏に移動しました。

 外出規制の間、住める当座の家探しをしていて見つけたのがこの家です。そして規制中のおよそ2か月を過ごし、またその年の夏の2か月間もこちらを借りて過ごし、いつの日かこの場所が家族の大切な場所になったらよいなと思うようになったのです。

──中心の建物は1500年代に建てられた家だとうかがいました。暮らせる状態にするまではかなり大変だったのでは?

中村:しばらく放置されていた家は、庭には鬱蒼と木々が茂り、建物は古くて薄暗くどんよりしていて。蚊の大群にも悩まされました。

 けれども、パリのわが家の天井に描いてもらった大好きなジャン・コクトーの絵と同じデッサンを庭のプールの底に発見したときに、家族みんなが運命的なものを感じて、ここは手を入れれば、きっと快適な住まいになるに違いないと確信したんです。