ただ、その後、海には市販のコロッケ。「手作りじゃなきゃ愛情伝わらないなんてそんなことないんだよねえ」とさばさばと売り物のコロッケ(あんなに練習したのにもう作らない)を海と食べてるときの切り分け感は先に進んでいる感じがした。
「お別れしたから」「もう恋人じゃないから」「(ママに)うん、ならない」「うん。一緒じゃない」「パパとかママじゃない大人にもちゃんと味方っているの」……云々と聞き心地のよい穏やかそうな声で話しているときも、その作り声がやっぱりちょっとこわかった。
◆海の苗字変更快諾には、水季の教育が生きていた
その2:海(泉谷星奈)、わりとあっさり“月岡海”を選ぶ。
夏は海を引き取ることになったものの、煩雑(はんざつ)な事務手続きとそれに伴う海の感情に頭を悩ます。転校はしたくないとぐずる海。ママが死んでいろんなことが変わったのに学校まで変えなくてはいけないことがいやなのだ。ママの思い出いっぱいの南雲家に離れがたいし、学校も変えたくない。でも夏と一緒に暮らしたい。わがままのようだが海の気持ちもわかる気はする。
夏は海のために転職まで考え始める。良い親のようだけど、親になるって大変だなと思う。
海は居場所にはこだわるが、苗字を変えることはあっさり承諾する。夏は親の再婚に伴って苗字が変わっていやな思いをしたので、変えなくていいかと思っていたし、「大人の都合に合わせて変えなくちゃいけないのには違うんじゃないかって」と深刻に考えていたのに。
海の苗字変更快諾には、水季(古川琴音)の教育が生きていた。水季が、家族とおそろいにできるのが苗字、家族からもらえるのが名前と海に教えていたのだ。海のさんずいは「水」の意味で、水季の「水」と「ちょっとお揃い」と楽しさを分かち合っていた。そのため、海は苗字が変わっても水季と離れてしまう心配をしないで済む。そして、第1話で夏と出会ったとき、「さんずい」と海が強調していた理由もわかる。