◆大人と子供が対等に見える演出は『海のはじまり』の新機軸

(C)フジテレビ
(C)フジテレビ
関わる人を狂わせていく魔性の女・海! 津野と話すときも夏と話すときも、海があどけない幼女というより、すっかり成熟した女性のように見える。『海のはじまり』が新機軸だと思うのは、これまでのドラマにあった、保護する大人と保護される子供の関係性に見られる、大人は強くて子供は弱いという先入観ではなく、大人も子供と対等で、なんなら恋愛ものにも見えるような演出をしているように見えることである。

どんなに演技が大人びている子役――例えば芦田愛菜を起用したとしても『マルモのおきて』の阿部サダヲと芦田愛菜、『ビューティフルレイン』の豊川悦司と芦田愛菜など、芦田愛菜はあくまでも大人びた子供だった。

一方、泉谷星奈は何もかもわかったうえで男性を振り回している感じがして、子役の概念を超えている。図書館で津野と話しているときの無警戒な仕草とか、夏と話すときのじとっとした瞳とか、フランス映画などの小悪魔キャラ見えてしまう。そうか、わかった、藤井がフラットなのは海と関わっていないからかもしれない。

<文/木俣冬>

夏(目黒蓮)が実家に戻ると、ゆき子(西田尚美)が「噛み締めてお食べ」と弥生が持ってきた「ちょっといいとこ」のゼリーを差し出す。いいとこのだけあってサイズが小ぶりで上品であった。

ドラマ前半、「鳩サブレー」はあんなに実名を出していたのに、いいとこのゼリーはどこのものなのかブランド名がない。それはともかくなぜ弥生が、夏と別れたら月岡家に謝罪しないとならないのか。

(C)フジテレビ
(C)フジテレビ
生真面目(きまじめ)な弥生は彼女なりに、海の母になる期待に応えられなかったことに後ろめたさもあるのだろうか。でもゆき子に謝罪することではないように思う。一度は嫁として迎えてもらうことにした月岡家へ、ゼリーを持ってお詫びに来るのもちょっとなんだかへんなアピール感がある。黙って去らない、爪痕残したい意識のようなものを感じなくはない。