福田監督が撮る映画は、正しくは映画ではありません。かつて毎年元日の夜に放映されていた『新春かくし芸大会』(フジテレビ系)の世界です。人気芸能人が集まって、その当時話題になっていた映画などをパロディとして演じていたヤツです。どこまでも軽いノリとゆるいギャグで構成され、メッセージ性はまったくなし。お屠蘇を飲んでほろ酔い気分の視聴者たちには、そんなライトな世界が好まれたのです。

 マンネリ化を指摘され、フジテレビは46年間続いた『新春かくし芸大会』を2010年に打ち切ってしまいましたが、そうした世界を喜ぶ層は確実にいます。『新春かくし芸大会』の終了と入れ替わるようにして、福田監督はブレイクしています。空いた席をうまく見つけたわけです。

日本で「ラジー賞」が開催されない理由

 イケメン俳優らにコント仕立てのお笑いをやらせるという手法に加え、福田監督作品が人気を集めている要因は、配役の豪華さでしょう。普通はプロデューサーがキャスティングするのに対し、福田監督は自分から俳優たちに声を掛けて回るそうです。しかも、キャスティングのアイデアの多くは、福田監督の奥さんによるもの。ちなみに奥さんは専業主婦。キャスティングセンスに優れた奥さんに、福田監督は頭が上がらないそうです。

 米国ではその年の最低映画を決める「ゴールデンラズベリー賞」(通称、ラジー賞)がアカデミー賞授賞式前日に発表されますが、日本では長らくこのような趣旨の映画賞は存在しないままです。それは多分、福田監督作品が毎年賞を独占してしまうので、賞レースとして盛り上がらないからではないでしょうか。ある意味、福田監督の存在はすごいと言えるでしょう。日本版ラジー賞ができる前から、殿堂入りが確定しているのですから。

 12月には福田監督の新作、松山ケンイチ&染谷将太がW主演する劇場映画『聖おにいさん THE MOVIE ホーリーメンVS悪魔軍団』が東宝系で全国公開されることが決まっています。当分は福田監督が日本映画界を蹂躙し続ける日々が続きそうです。