TVドラマ版に引き続き、清野菜名、橋本環奈、仲野太賀らが共演。福田作品でおなじみの佐藤二朗、ムロツヨシも登場し、アドリブでギャグを繰り広げるというお約束のパターンです。磯村勇斗らが参加しての大乱闘シーンが、クライマックスには用意されています。

 映画的な見どころがあるとすれば、柳楽優弥が演じる不良高校生・柳鋭次の狂犬ぶりでしょう。クレバーな頭脳を持ちながら、裏表のある人間の嫌らしさを、実に自然に、そして楽しそうに柳楽優弥は演じています。『ディストラクション・ベイビーズ』(16年)や『ザ・ファブル』(19年)でも見せたように、狂気のキャラクターを演じればピカイチな役者です。柳楽優弥が出演していることで、劇場版『今日から俺は!!』は作品として成立していることは間違いありません。

 あとは横浜銀蝿のヒット曲「ツッパリHigh School Rock’n Roll」や嶋大輔の「男の勲章」をキャストがそろって歌い、演奏するというステージパートを加えて、バラエティー色豊かな劇場版は完成です。テーマ性やメッセージ性は、まったくありません。でも、だからヒットしたのです。公開された2020年はコロナ禍の真っ最中。若手人気キャストが大集結したお祭りムービーに、自粛生活に飽き飽きしていた若い世代は飛びついたのです。

 そこで今回の主題である「福田雄一監督が撮る映画は本当に面白いのか?」問題についてです。鈴木亮平が主演した『HK 変態仮面』(2013年)は、マジで面白かったと思います。全裸に近い姿で顔にパンティーを被って熱演する鈴木亮平、そしてさらにその上を行く変態ぶりを見せるニセ変態仮面を演じた安田顕には、熱い俳優魂を感じましたよ。こんなにもくだらない内容の作品を、真剣に映画化した福田監督にもリスペクトを覚えたものです。

 しかし、その後は失望しかありません。鈴木亮平や安田顕に全力を振り絞らせた『変態仮面』のような熱気は、福田監督が撮る劇場映画からはあっさりと消えてしまいました。小栗旬、菅田将暉、橋本環奈らが共演した『銀魂』は興収38.4億円を記録し、福田監督は売れっ子となっていくものの、キャストの豪華さが話題になるだけです。山崎賢人が主演した『斉木楠雄のψ難』(17年)は、寒いギャグと橋本環奈の顔芸が延々と続き、あまりのつまらなさに気絶したくなりました。新しいタイプの拷問と呼んでもいいんじゃないでしょうか。