五頭:ほとんどは20代から入って全国巡業していた、劇団時代に演じた様々な役で身につけたものです。幼少期からラジオでよく聞いていた民話の影響もあるかもしれません。民話にはいろんな地域の方言が入っているので。いろんな方言が耳に馴染み深くて、自然と喋れるようになっていきました。

◆小林幸子と『のど自慢』に!「演劇に生涯を捧げるつもり」

――幼い頃から役者になりたかったんですか。

五頭:本当は歌手にもなりたかったんです。高校生の時にNHK『のど自慢』の故郷の新潟会場にも出ましたよ。その当時は同じ新潟出身者の小林幸子さんも出ていて、いつも彼女が優勝していました。僕は学ラン着て『あゝ上野駅』を歌いましたが残念ながらでした(笑)。

五頭岳夫さんインタビュー
――そうなのですね。それがなぜ役者に。

五頭:歌うことも演じることでしょ。高校生の時に市民劇団の公演を観て衝撃を受け、自分とは別の人間を演じることに魅力を感じ、演劇サークルを作ったんです。違う人になった姿を観てもらう喜びや楽しさを知ってしまったんです。小さい頃からモノマネが上手いねと言われることに喜びを感じていたし、単純に演じることが好きだったんです。

――好きなことを追い続けたんですね。

五頭:ずっとそうしてきました。演劇に生涯を捧げるつもりできたから、一度の事実婚はしたものの、子供も作らず家庭というものは持たなかった。まあその後、下顎の骨が溶ける病気をして顔の左側に金属プレートを入れる手術を何度もして……その後、胃がんも患っているので、それどころではなかった時期もありました。

◆「一回しかない人生。悔いを残したら嫌じゃん」

――今もおひとりということでしょうか。

五頭:はい、団地で一人暮らしをしています。その団地では理事長をしてまして、独居老人の生存確認的な意味合いも込めて、回覧板を渡しに一軒一軒、尋ねるんですよ。この夏はもう毎日のように救急車が来て、老人が運ばれていくのを見ました。