◆調べていくうちに感じた、岩谷時子との共通点

――それほど遠い距離感の存在ではなかったということですよね。

市毛:そういうことがいくつも自分の体験の中にあったので、一歩踏み出していればもしかしたら近い世界にいたのかもしれないと、そういう時代でした。

 越路さんと岩谷さんのエピソードもリアルタイムに聞いていたので、その当時のことを自分が演じるということが、とてもうれしくて。それで改めて当時の資料をたくさん集めて読んでみたんです。

――リサーチした結果、いかがでしたか?

市毛:すると思っていたふたりの姿とはまた違う、実際の姿を感じました。その時、岩谷時子さんの育ち方、思考が、自分ととても似ていたことにと気付いたんですね。

 おこがましいことなのですが、わたしは岩谷さんと似ているかもと思ってしまって(苦笑)。そのわたしが60歳過ぎでこの役に出会えるなんて、本当に素敵なことだなと思ったんです。