ビジネス界の「寄らば大樹の陰」は屈強な企業戦士の集団である

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

強力な庇護を求めて大企業に集ったビジネスマンたちのことを「寄らば大樹の陰の考えの人」だと侮蔑することは、どうやら実際のビジネスシーンには即していないようです。

「寄らば大樹の陰」で大企業に集まったビジネスマンたちは、大企業で生き抜くために必死の努力を繰り返しています。

大樹の庇護を求めて集まった彼らは、大樹の陰で生き残るため、いつしか屈強な企業戦士へと変身しているのです。

周囲から「どうせ『長いものには巻かれろ』でのんびりしているんだろ」と卑下するのは、いささか軽率だと言わざるを得ないでしょうね。

寄らば大樹の陰の由来

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

現在、日常会話などで使われていることわざの多くは江戸時代に発達して整理されたといわれています。

その歴史の中で俳諧の作法を示した『毛吹草』という書物が編さんされ、その中に『世話』という704個のことわざが収録されました。

これをもとに編さんされたことわざ辞典『世話尽』に掲載されているのが「寄らば大樹の陰」です。

つまり「寄らば大樹の陰」は、江戸時代のころから使われ始めたことわざだということですね。

人間も動物も、強い日差しや厳しい風雨を防ぐにはどこかに身を寄せてしのぐもの。

大きな樹は、日差しや風雨をしのぐには最適な木陰を作り出します。

転じて、困難を回避することや災いを避けるには、大樹のような存在による強い庇護に頼るのがベストだという教訓として知られるようになったわけです。

寄らば大樹の陰の『陰』にみる日本人らしい発想

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

「寄らば大樹の陰」にも使われている『陰』は、単に日陰を意味しているわけではありません。

実は、ここにとても日本人らしい文化が見え隠れしているのです。

みなさんも、日常の会話の中で「おかげさまで」という言葉を使う機会があるはずです。

・おかげさまで商談がうまくまとまりました
・今回のプロジェクトが成功したのは、御社のお力添えのおかげです

この「おかげさま」は、もちろん「お陰さま」ですから『陰』が関係していますよね。

『陰』とは、日陰のようなジメジメしたイメージを持つ言葉ではありません。

「かばって守る」という庇護の意味合いがあります。

日本人には、日常生活の中で『感謝』の心を大切にする民族です。

なにかひとつの大きな成功を成し遂げたとき、それは自分自身の努力の成果によるものだと自負するだけでなく、周囲の応援や力添え、運の良さ、さらには神や仏の加護などのような目に見えないさまざまな力がはたらいた結果だと感謝します。

「寄らば大樹の陰」の『陰』は、由来のとおり大きな木陰を示しているのではなく、自分自身にとって有益を運んでくれるさまざまな力を意味しているのです。

寄らば大樹の陰の類義語は?似た意味のことわざはある?

「寄らば大樹の陰」と「長いものには巻かれろ」は同じような意味合いで使われることがありますが、ビジネスシーンに関していえば少し気色が異なるようです。

では「寄らば大樹の陰」と同じ意味を持つことわざはあるのでしょうか?

寄らば大樹の陰の類義語①犬になるなら大家の犬になれ

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

「寄らば大樹の陰」とまったく同じ意味で使われるのが「犬になるなら大家の犬になれ」です。

「いぬになるならおおやのいぬになれ」と読みます。

このことわざでいう『大家』とは、アパートの大家さんというよりは権力がある家柄を示す『大家(たいか)』の意味合いが強く感じられます。

同じ飼い犬になるのだとすれば、より良い暮らしができる飼い主のもとが良いという意味で、転じて「仕える先はできるだけ頼りがいがある先が良い」という意味です。

さらに「大所の犬になるとも小所の犬になるな」や「犬になるなら庄屋の犬」というものもありますが、見てのとおりで同じ理屈をルーツに持つことわざだとわかりますね。

寄らば大樹の陰の類義語②箸と主とは太いがよい

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

「箸と主とは太いがよい」は「はしとしゅうとはふといがよい」と読みます。

みなさんが食事をするときに使うお箸は、今でこそ質が良い木材やプラスチック、チタンなどの耐久性が高い素材が採用されていますが、昔は庶民の手に渡るお箸といえば木っ端のような粗末な素材が主流でした。

食事をしていてもポキッと折れてしまうようなものも多かったので、お箸といえば太くて丈夫な折れにくいものが好まれていたのです。

そこで、付き従う主人とお箸は太くて強いほうが良いという意味でできたのが「箸と主とは太いがよい」ということわざです。

「亭主と箸とは強いがよい」と表現することもあります。

寄らば大樹の陰の類義語③立ち寄らば大木の陰

寄らば大樹の陰の意味や使い方は?寄らば大樹の陰の例文と類義語・対義語
(画像=『Lovely』より引用)

まさに読んで字の如しで「寄らば大樹の陰」とまったく同じ意味・ルーツを持つのが「立ち寄らば大木の陰」です。

「寄らば大樹の陰」を口伝する中で、よりわかりやすい表現に変化したものでしょう。

旅の疲れを癒したり、一時的に暑さや風雨をしのいだりするなら、できるだけ大きな樹の下を選ぶことで安心して休むことができる…というイメージが「寄らば大樹の陰」よりも平易になっていますよね。