◆熟年離婚は、なぜ今増えるのか?

カウンセラーの緒方リサコさん
カウンセラーの緒方リサコさん
 データ上でも、熟年離婚は増加傾向にあるとする専門家がいますが、当事者と向き合う立場である緒方さんから見て、ここ数年の傾向はあるのでしょうか。

 緒方さんは意外にも「熟年離婚はそんなに増えていない気もする」と教えてくれました。

「コロナ直前までは、熟年離婚が最近増えたなという印象がありました。しかしコロナ禍を経て、今は熟年離婚を希望する人が少なくなっているのではないかと、私個人は感じます。

 とはいえ、それは熟年夫婦の問題が減ったわけではありません。再構築を考えるご夫婦が増えたり、カウンセリングを通さずに離婚を選択した人が増えたりしただけの可能性もあります」(以下、緒方さん)

 また、熟年離婚の傾向の変化には、生活や価値観の変化が関係しているとも話します。

「コロナ禍を経て、私達の生活も価値観も大きく変化しました。在宅勤務が広がり、長時間自宅で過ごすのが当たり前になったり、価値観については『卒婚』という言葉が浸透したりして、『自分らしい人生はいくつからでも手に入れて良いんだ』という感覚が広まっています。

 こうした流れもあってか、経済的に豊かなご夫婦は、離婚ではなく別居婚となって婚姻関係を継続するケースも多くあります。生活や夫婦のあり方に多様性が生まれたことで、熟年離婚の形も、ここ数年でさらに変化しているのではないでしょうか」