「本作は、全楽曲をエルトン・ジョンが作っているのですが、本当に素晴らしいですね。メロディーで語られるストーリーがとてもよくできているんです。例えば、僕と長男のトニー(ビリーの兄)が意見を戦わせる場面。ビリーの姿に心動かされ、オーディションを受けさせるお金のために仲間を裏切り、スト破り(scab)をしようとするんですが、トニーは猛反対する。自分と同じ道を歩いてきたトニーと、新しい道へ進もうとしているビリー。父親からすれば二人の子供への愛情に差などないのだけど「ビリーには可能性があるかもしれない」と伝えられたトニーは複雑ですよね。その気持ちが複雑な旋律、あえて同調しないキーで表現されているんです。これこそミュージカルの醍醐味ですし、この作品はそのミュージカルの中でも最高峰だと思います。言語がわからなくても、作品の内容を知らなくても圧倒されて涙が出る。そんな場面がこの作品にはいくつも散りばめられているんです」
ビリーを演じる4人の少年について伺うと。
「僕がデビューしたのがこの子たちと同じくらいの歳。その時はセリフを話すので精一杯だったのに、今のビリーたちは踊って歌ってバック転までするんですから驚きました。この40年の間に日本の芸能界のレベルがこんなにも上がったということなんですよね。まだビリー役の子たちとは1度しかお会いしていませんが、これから稽古を通して関係性を構築していくのが楽しみです。役柄では父と息子ですが、舞台上ではプロフェッショナル同士。お互いに切磋琢磨して良いものを作っていきたいと思っています」
バレエを踊っているときだけは辛いことも忘れられるビリーにちなみ、鶴見さんが無我夢中になれることを伺うと。
「僕も日本舞踊を20年ほどやっているので踊っているときだけは無になれるビリーの気持ちはわかる気がします。踊りに集中しているとその瞬間だけは嫌なことも忘れて没頭できるんです。あとは...、ゴルフかな(笑)。先日もゴルフ仲間とプレーしたときにふと“俺たち、ゴルフがなくなっちゃったら何を楽しみに生きていけばいいんだ”って話をしていました(笑)」