※以下、2022年8月12日掲載記事の再掲です。当時の情報が含まれます。

『天空の城ラピュタ』宮崎駿がノベライズ版で示した“権力者の隠蔽体質”

 今週からの金曜ロードショーは、夏休み恒例のスタジオジブリ特集。その第一弾を飾るのは『天空の城ラピュタ』。知らぬものとてない国民的アニメ監督・宮崎駿の代表作のひとつだ(代表作がいっぱいあるから決められないけど)。

 本作は監督同様、国民的アニメ制作会社として認知されているスタジオジブリの第一回作品。よく『風の谷のナウシカ』が第一弾作品と勘違いされることがあるが、『ナウシカ』は宮崎が所属していた東映動画のスタッフが設立したトップクラフトの制作作品で、85年に設立したジブリの第一回作品が『ラピュタ』だ。

『ラピュタ』が公開されたのは1986年。80年代はアニメにとって、過度期を迎える時代だった。60年代に手塚治虫によってお茶の間の娯楽としてスタートしたテレビアニメは、70年代に監督デビューした富野喜幸(当時)の活躍と『宇宙戦艦ヤマト』によってブームを築いていた。

 そして80年代のアニメは視聴者の熱烈な支持を受け、映画化を嘆願するファンの署名まで行われた『六神合体ゴッドマーズ』(1981)、リアルな戦争描写とそれが生み出す悲劇を描いた単純な勧善懲悪ではない『太陽の牙ダグラム』(〃)、5年に渡り放送され多数のファンを生み出した『うる星やつら』(〃)、リアルに変形するメカ、ロボットを登場させ戦場での恋愛模様を描きその後シリーズ拡大に成功した『超時空要塞マクロス』(82)、SFハードボイルドアクションを初めて成立させたといえる『スペースコブラ』(〃)といった作品群はそれまでの「アニメは子供が見るもの」という固定観念を一変させた。今でいう「オタク」の人たちが支持し、評価されていく作品が誕生していた時代となった。

 次第に高年齢向けになっていくアニメに対して宮崎は古典の復興、王道の冒険活劇を目指した。