◆「貸せるでしょ?」
そのAさんと友達の縁を切ったのは、その慰謝料を「貸してくれない?」と言われたから。
「そのときAに言われたのは、離婚の原因は性格の不一致じゃなくて旦那さんが暴力を振るうからで、子どもを連れて逃げることで精一杯だったって事情でした。それは確かにつらいし大変だっただろうけど、不倫の慰謝料を払わせた私を『羨ましい』と何度も言われると、あのとき本当に嫌な思いをした私の気持ちなんてまったく考えてないのがわかって悲しかったです」
何も羨ましくないよ、あなたも私もがんばったじゃない、とそのたびに返していた優さんでしたが、パートのシフトが減らされて生活が苦しいことを言われ、「貸せるでしょ?」と当たり前のように口にするAさんには、大きなショックを受けたそうです。
「慰謝料について『私もちゃんとすればよかった』って後悔する気持ちはわかるけど、私だって大変な思いをしてやっと払わせているわけで、楽をして手に入ったお金じゃないんですよね。Aの『貸せるでしょ?』は、まるであぶく銭なんだからこっちに渡して当然みたいな響きがあって、本当にショックでした」
もう限界だと思った優さんは「子どもたちとの生活で使い切った」と嘘をつき、落胆するAさんの愚痴を聞く心の余裕もなくて、その日はすぐに別れたといいます。
◆自分と同じように人の離婚もつらいと思うこと
その日からAさんとは連絡をやめ、今は疎遠になったと話す優さん。
「お金を貸してと言われたことより、慰謝料を羨ましいと思われることのほうがつらかったです。事情はAとは違うけれど、私だって元夫との離婚では相当に嫌な思いをしていて、そんな苦労を無視されたらやっぱり悲しいですよね……」
自身の離婚について「後悔したくなかった」と何度も口にした優さんは、そのために努力をして結果を掴んでいます。離婚の過程は人それぞれですが、結末だけを見て羨望を向けることは、その人を深く傷つける可能性もあるのですね。
また、それに乗って自分が得をするような提案も、失礼とは言えないでしょうか。自分と等しく、他人の離婚には相応のつらさと痛みがあることを想像できないと、親しかった友人まで失うことになります。
―私のヤバい女友達―
<文/ひろたかおり>
【ひろたかおり】
恋愛全般・不倫・モラハラ・離婚など男女のさまざまな愛の形を取材してきたライター。男性心理も得意。女性メディアにて多数のコラムを寄稿している。著書に『不倫の清算』(主婦の友社)がある。