◆広末涼子は13年の結婚生活で母としても女優としても成長

ジュン氏と再婚する前の広末は、「人生最悪な状況」だったらしい。そんなときに一見、強面(こわもて)ながら、実は「平和を希求する」活動家のジュン氏に惹かれても不思議はない。経済的に彼を支えることも厭(いと)わなかっただろう。その後、夫婦には子どもふたりが産まれ、多忙ながらも充実した日々だったに違いない。

だが結婚生活13年の間には、広末涼子自身が大きく成長していったのではないだろうか。母として子どものことには熱心だったというし、女優としても実力をつけた。

2022年、「第96回キネマ旬報ベストテン」助演女優賞を受賞したとき、「長引くコロナ禍で役者という職業が必要なのかと悩んだこともあった」と語り、トロフィーを手にして「生きている限り、俳優として仕事を続けていきたい」と笑みを見せた。

もしかしたら、もうジュン氏の「癒やし」は必要なかったのかもしれない。人間は多様な面を持ち合わせるから、13年の間にはジュン氏への信頼が揺らいだこともあっただろう。彼は変わらなかったかもしれない。彼女が変わっただけかもしれない。

しかし、夫婦の成長の速度が違っていることを確認しないままに時間が進んでいくと、気づいたときには溝(みぞ)ができていることも多々ある。

◆「活動家」と「実業家」、ヒロスエが求めたものとは……

sio 100年続く、店のはじまり 鳥羽周作シェフ
映画『sio/100年続く、店のはじまり』
そして末っ子が小学校に入って子育ても一段落したとき、鳥羽周作シェフとの「恋」が転がりこんできたのだ。2年前に仕事で出会っていたとはいえ、ふたりが急接近してから、まだたった3ヶ月しかたっていない。恋が一気に燃え上がったところに、いきなり文春砲で冷水を浴びせられた感じだ。

鳥羽氏は、平和や夢を語るジュン氏とは違って、現実として「料理を作る人」であり、「実業家」である。不倫が公になって、多くの事業が停滞しているが、こうなる前にはかなり手広く事業を拡大し続けていた。

そもそもは仙台大学体育学部の出身で、教員のかたわらサッカー選手を目指していたが、自分の実力に見切りをつけた。32歳のときにコックだった父親の影響もあって、大好きな料理の道へと転身。あちこちで修業を積んで2018年に「sio」をオープンした。

「料理業界に新たな価値観を提示する革命家」としてメディアに登場することも多々あった。彼は自分の立場や行動に価値観を付加することのできる、まさに「やり手の実業家」だったのだ。

広末は、そんな彼を好きになった。40代になり、地に足をつけて女優を転職として覚悟を決めた彼女がほしかったのは、夢を語る幻想的な男性ではなく、自らバリバリと世の中に切り込んでいく実業家だったのではないだろうか。