◆超インフレ時代のブラジルで起こった現象とは?

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写真はイメージです
 では、日本のように経済が弱い国で、過剰なインフレが起こるとどうなるか。具体的に過去の事例を紐解いていきましょう。

 1980年代後半から1990年代前半のブラジルでは、財政赤字と公的債務残高が拡大し、大量の紙幣が増刷されたことがあります。その結果、市場には大量のお金が出回り、年間約2500%の物価上昇率を記録するハイパーインフレが起こりました。これだけのインフレが起こると、給与アップ程度では到底追いつきません。

 その際、ブラジル国民が取った行動は、給料をもらったその日にスーパーに駆け込んで食べ物を購入するというもの。前代未聞のインフレなので、明日になれば、牛乳やパン、肉など生活必需品の値段が倍になっているかもしれない。だから、一刻も早く現金をモノに換える選択を取ったのです。これは極端な事例かもしれませんが、日本でもインフレ前提社会はすでに始まっています。

 仮に、現在のように物価上昇率が3%程度を維持し、銀行金利がほぼ0%の状態で銀行に預金を続けた場合、資産価値は今後10年間で30%目減りします。

 現在、3000万円の貯金が、10年後、その実質的な価値は2100万円程度になってしまう。いざ数値にすると、どれだけ大変なことか、よくわかるのではないでしょうか。

<撮影/小黒冴夏>

【中野晴啓】

なかのアセットマネジメント代表。1963年、東京生まれ。明治大学商学部卒業。2006年セゾン投信を設立、2007年4月代表取締役社長、2020年6月より代表取締役会長CEO 就任。2023年6月退任後、同年9月なかのアセットマネジメント設立。全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。近著に『誠実な投資 お金から自由になれる「長期投資」の鉄則』(徳間書店)