◆時にはカフェでまったりするのも大切

 日本でも素敵なカフェは増えましたが、文化というにはまだ追いつかない感があります。なぜなら、心の底からくつろげるカフェがいったいいくつ存在するのか?と疑問視してしまうからです。コーヒーだけで長時間いられない、そろそろフードをオーダーしないと店員が冷たくなりそう……、と心がざわついたりしないでしょうか。

時にはカフェでまったりするのも大切
モンマルトルでの1枚
 フランスでは「コーヒー1杯で何時間でもいられる」というのは過言ではないそうです。思えばかつて観たフランス映画でも、「1日中カフェにいる人達、しかも毎日メンバーが同じ」という描写がありました。しかも店員さんも笑顔を絶やさず、家族のように接しているのです。この穏やかな世界は映画だけではなく、現実の日常なのです。

 友人と待ち合わせ、知人と食事またはお茶。仕事の商談、等々。誰かと楽しむカフェは理解できるけれど、ひとりで読書したり仕事や勉強したり、家でできることをなぜわざわざカフェで何時間もやるのだろう、と首を傾げる人もいるかもしれません。日本でもフランスでも、時にはひとりで何も考えずに、カフェでダラダラ雑踏を眺めている人もいるでしょう。

 ところがフランスだと「『ダラダラ』とは言われず、『détendu=肩の力を抜いた、余裕のある』というポジティブな態度にとられる」といいます。まさに生きることを楽しむ能力にたけたフランス人。これぞ幸せへの近道です。

 本書には、ホームパーティ、バカンス、リアルな食卓や出産や子育てなど、生きる上でベースになる項目から、旅行に役立つパリガイドまで掲載。読みごたえは十分です。「La vie est belle!(美しきや人生)」。この精神をフランスから学び、私も輝く人生を謳歌したいです。

<文/森美樹>

【森美樹】

1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx