―新連載「沼の話を聞いてみた」vol.1 後編―

科学的根拠の乏しい健康法や母親たちを追い詰める育児出産周りの言説など。さまざまな「謎物件」に沼った体験談を聞いていく連載第1話の後編では、マルチ商法2世であるEさんの話を、引きつづき聞いていこう。

マルチ2世
※写真はイメージです(以下同)
◆幼馴染の家もマルチ商品だらけ

物心ついたときから母がマルチ商法の会員。そうした環境で、メリットをひとつだけ感じている。「しくみをしっているから、免疫があるんです」

Eさんの周りも、似たような状況の家庭が多いという。Eさんは小学校から大学までを、私立の一貫校で教育を受けている。

「ずっと似たようなメンバーで持ち上がってきて付き合いも長いので、お互いの家に行く機会も多い。すると自分の家と同じような、マルチ商品があるんですよね」

「うちにはもう死ぬほど在庫ある!」「無水鍋のシフォンケーキ飽きた」「プルーンエキスのおにぎりは、わりとうまい」「サプリはかんべんしてほしい」。小中高とそんな「マルチあるある」が飛び交っていたという。恐るべし、子どもたち。

ところが大学へ進学すると、一部に不穏な空気が漂ってきた。

「いわゆる外部生(高校や大学から入ってきた生徒)が、マルチにどハマりして、勧誘活動を始めたんです。それまで普通に付き合いやすいヤツだったのに、突然夢を語り始めて、いまで言う意識高い系になった。『あいつはヤバい』とウワサが広まり、あっという間に周りから浮いて孤立してしまった。ちょうどそのころって、マルチの華やかな成功者の本が出版されて、出版記念イベントを渋谷のカフェとかでよくやっていたのを覚えています。一度誘われて参加して、自己啓発本みたいなのを買ったかな」