◆10万円がパァになる悲劇

「ざっと荷物のチェックをしたら、なんと、新居用に大奮発して買っておいたガラス製のペンダントライト10万円也が割れていたんです。緩衝(かんしょう)材と毛布でしっかり巻いていたし、『これは大事な割れ物だから』と後輩たちに伝えてもいたんですけど、積むところはきちんと見届けなかったんですよね……。

 アンティークで修理・交換ができない商品だったので、10万円がパァ。『弁償しろ!』と言いたくなりましたが、悪いのは素人へ安易に任せてしまったこっちだし、悲しさと悔しさのぶつけどころがなく倒れそうになりました」

引っ越し代をケチって大損
 悲劇はまだ終わりません。憔悴(しょうすい)しきった吉川さんをさらなる仕打ちが待ち受けていました。

「レンタカーを返しに行こうというところで、後輩が対物事故を起こしたんです。路駐している別の車をよけるために切り返しをしたら、電柱にガーン! と。 急いでレンタカー屋に電話をしたら、補償に入っていてもノン・オペレーション・チャージというものが2万円かかると言われ……。もう、さすがに膝から崩れ落ちましたよ」

 

 恐縮した後輩が謝礼の辞退を申し出たものの、「そういうわけにはいかない」と吉川さんの彼氏。押し問答の末、5000円ずつの謝礼を支払うことになったとか。

「内心、彼氏に対して『カッコつけんなよ! 払わなくていいよ!』と思いましたが、後輩に悪気はないし先輩のメンツもありますしね。グッとこらえました。それにしても、結局いくらのマイナスになったのやら……。怖くてしっかり計算できませんでした」

 やはり、餅は餅屋。「高額に思えても引っ越し業者の相場は実は妥当!」「スムーズにストレスなく引っ越しするには業者にお願いするのが一番!」と肝に銘じたそうです。

―シリーズ「春のトホホ」体験談―

<文/鈴木うみこ イラスト/やましたともこ>