税務署と企業が手を組む究極の官民癒着
金持ちの行っているアンフェアな方法のわかりやすい例として、「天下りの受け入れ」があげられる。
「天下り」には他にもさまざまなカタチがあり、一般の人が想像する以上に広く行われている。
たとえば、建設関連業者が県庁の土木課などのOBを非常勤職で雇い入れておくのは、ごくごく普通のことである。OBを雇い入れているというだけで、公共事業が得やすくなるからだ。
90年代の公共事業全盛期などには、社員数名の小さな工務店でも、天下り役人を雇い入れている会社がざらにあった。最近は、公共事業がずいぶん減ったので、さすがにそういう企業は少なくなったが、なくなったわけではない。
そして、税金を安くするために、税務署OBを顧問にするということは、現在も非常によく行われている。
日本の税務には、「税理士」という制度が設けられている。税理士とは、企業や市民が税金の申告をする際に、その申告書をつくってくれる人のことだ。
税理士試験に合格してなる人もいるが、最も多いのは国税OBである。国税に20数年以上勤務すれば、自動的に税理士資格がもらえるのだ。
この制度をうまく悪用してきたのが、金持ちたちである。
企業が税理士を使うとき、何を期待するかというと、もちろん税務をみてほしいこともあるが、それよりも税務署との交渉役としての働きである。
その際、どうせ国税OBに依頼するなら、「なるべく高い地位にいた人にお願いしよう」ということになる。資金力のある人が裁判を行うとき、元検事の弁護人、いわゆる「やめ検」に弁護を依頼するのと同じだ。
だから、税務署長や副署長は、企業から顧問として受け入れられることが慣例化しているのである。
以前は、税務署が管内の企業に対して「今度、うちの署長がやめるのだけれど、顧問として雇ってくれないか」と打診までしていた。その「要求」を受けいれる企業は、当然ながら、税務署に手心を加えてもらおうと考えていたはずだ。
また税務署のほうも、税務署長を雇ってくれた企業に、そうそう厳しいことは言えない。はっきり言って税務署OBの税理士を顧問にしていれば、調査の手はかなり甘くなる。
税務署としても、上司や先輩だった人が顧問をしている会社に対して、そう無茶なことはできない。特定のOB税理士の顧問先には「税務調査に行かない」という暗黙の了解もあったりする。
官民の癒着もいいところである。
信じられないかもしれないが、これは事実である。
この大企業への税理士あっせん制度は、数年前に国会で問題にされたため、平成22年に、表向きには廃止された。
しかし、いまでも内々では行われている。
この制度に関しては、国税職員の間でも常々疑問に思われているのだが、最高幹部のやっていることなので、なかなか廃止できない──それが実情なのである。
大村大次郎(Ohmura Ohjirou)
大阪府出身。国税局で10年間、主に法人税担当調査官として勤務し、退職後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。執筆、ラジオ出演、テレビ番組の監修など幅広く活躍中。『税金を払わずに生きてゆく逃税術』(悟空出版)、『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書クラレ)など著書多数。また、経済史の研究家でもあり、別のペンネームで30冊を超える著作を発表している。
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