「隣の奥さんにカレーを持ってこられたら……カレーを持ってこられたら……それは……」

 伊藤がテレビでネタを飛ばしたのは初めてだという。

「なんでこんなに笑わないなら、やらせるんだよ!」「どういう了見なんですか!」

 取り返しのつかない空気を、伊藤がなんとか取り返そうともがく。畠中が徹子に感想を求めると、徹子は「おもしろいと思いました……あの……あのね……」と口ごもる。

 その後、たびたび沈黙が訪れながら、オズワルドが声優として出演した映画『クレヨンしんちゃん』の告知へ。伊藤は「畠中のセリフが3つしかないから、自分のほうがギャラを多くもらうべき」という、ここぞと用意してきたであろうコメントを繰り出すが、これがさらなる地獄を産んで、強制終了されるように「ルールル」が鳴り出す。

 これぞ、視聴者が求める『徹子の部屋』芸人回のテンプレートだろう。そして、制作側はこの空気を意図的に作っているに違いない。

 それは芸人に対して失礼でもあるし、悪ノリでもある。だが、こっちだって『徹子の部屋』は芸人回しか見ないのだから、それはお互い様である。

(文=新越谷ノリヲ)