「独特のスローテンポな漫才が人気だそうですけど」という徹子の振りに「僕らよりたぶん独特なスローテンポだと思います、徹子さんは」と、すぐさまお笑い的な“正解ツッコミ”を返す伊藤。

 だが、相手は若林でも澤部でも吉村でもない。徹子はオズワルドのことを知らないし、おそらく「視聴者もオズワルドのことをよく知らない」と思っている。だから、伊藤の正解はスッと吸い込まれ、徹子は基本情報を引き出そうと次の質問に進んでいる。

 ひとしきりコンビ結成の経緯が披露される。普通の話は畠中の担当である。伊藤は唇を固く結んで、コクコクとうなづくばかりだ。

 そして、いよいよネタ披露の時間である。

 繰り返しになるが、オズワルドは年間1,000ステージに立ってきた漫才師だ。この日の「ダイエット」のネタも、『徹子の部屋』向けのチョイスだろう。「ヒキニキ」ほどシュールでなく、「しまもと」ほど不条理でもなく、「友達」ほどホラーでもない。オズワルドの中ではライトなタッチで万人ウケしやすいネタであろうし、それこそ何百回もかけてきたはずだ。

 その「ダイエット」を、オズワルドはまともにできなかった。

 鉄板のツカミである「今85キロくらいあるのかな」「もともとはどれくらいあったの?」「3,200グラム」「だいぶ太ったね」で盛大にスベると、その後も沈黙の中でボケとツッコミがベルトコンベアのように押し流されていく。

 先に噛んだのは、冷静なはずの畠中のほうだった。引きずられるように、伊藤も覚束なくなっていく。伊藤が提案した「16時間断食」の方法についての説明の部分だったが、それがどんなダイエット法なのか全然伝わってこなくなる。

 ここで画面が2分割され、左半分には、なんとかネタを進行しようとする畠中と「もうダメだ」と悟って苦笑いをするしかない伊藤。右半分には口を半開きにした仏頂面の徹子が映し出される。残酷な場面だ。

 伊藤の声が小さい。右手の位置が変だ。