源泉徴収あり特定口座でも確定申告を行うべきケース
源泉徴収ありの特定口座を選択していれば、株式投資信託、公社債投資信託ともに確定申告を行う義務はない。ただ、状況によっては、確定申告を行った方が良いケースもある。そのパターンを理解し、自身の状況と照らし合わせることが重要だ。
最も可能性が高いのは、複数の金融機関に跨いだ損益を通算するケースだろう。特定口座はそれぞれの金融機関ごとの口座内で損益を通算するため、金融機関を跨いだ損益通算を行うには、確定申告を行う必要がある。A証券での利益とB証券での損失を通算するといった場合である。
源泉徴収あり特定口座の場合、それぞれの金融機関ごとに「特定口座年間取引報告書」が発行されるため、確定申告ではその報告書に基づいて損益通算の計算を行う。
売却損の繰り越しを行う場合も確定申告を
売却損が出たが、その年に損益通算しきれなかった分については、その損失を繰り越し、翌年以降3年の間、課税対象となる売却益から差し引くことが可能である。この「譲渡損失の繰越控除」を活用する場合にも、確定申告が必要となる。これにより、複数年で税金を適正化する効果がある。
なお、この制度の活用には、売却損が出た年の確定申告が必要な上、翌年以降、損益通算をしない年も含めて、確定申告を行う必要がある。
源泉徴収ありの特定口座で投資信託を購入している場合でも、売却損が大きく出た年は確定申告を行い、翌年以降に損失繰り越しを行うようにしたい。
株式投資信託は総合課税で配当控除の活用も可
株式投資信託の分配金は、上場株式の配当金と同様の課税体系となるため、総合課税として配当控除を受けることも可能である。もちろん、この場合には確定申告を行う必要がある。
総合課税となる場合、20.315%という固定税率ではなく、自分の所得に合わせた累進課税となるほか、所得によって控除が受けられるため、節税が可能となるケースもある。自身の所得額に加え、他の譲渡損益等の状況等により一概に節税可能とは言えないが、選択肢として頭に入れておきたい。
配当控除の活用で注意すべき点は、全ての株式投資信託の分配金が配当控除の対象となるわけではないという点である。株式投資信託は株式を組み入れることが可能な投資信託のことを指すが、その中でも、約款で定める株式の組入比率が25%以上、外貨建て資産の割合が75%以下である株式投資信託のみが配当控除の対象となる。また、それらの比率によって、控除率も異なってくる。
配当控除を活用する場合、これらの制度を正確に把握し、総合課税で申告することのメリットを慎重に検討すべきであろう。
投資信託の税制は、株式投資信託と公社債投資信託に分かれるが、金融所得課税の一体化を受け、非常に分かりやすい制度となった。また、源泉徴収ありの特定口座を活用すれば、確定申告の必要もなくなる。
分配金に掛かる税金と、売却益、償還益に掛かる税金をそれぞれ把握した上で、自身の確定申告の必要性や、申告することによるメリットを総合的に判断できるように心掛けたい。
文・ZUU online編集部/ZUU online
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