古代メソポタミア時代、イラクには多くの神が存在しジッグラトと呼ばれる巨大な聖塔に祀られていました。今回はイラク国内に遺る希少なジッグラト、バグダッド郊外のドゥル・クリガルズをご紹介します。
ジッグラトとは?
ジッグラトは、「高い場所」を意味する古代メソポタミアの聖塔です。現在はイラク南部のウル、イランのチョガ・ザンビール、そしてここドゥル・クリガルズに遺すのみです。
ジッグラトでは何が行われていた?
古代メソポタミアでは、ジッグラトの頂上に神々が住んでいると信じられ、宗教的な儀式が執り行われていました。通常は偉人と聖職に就く者しか入ることができなかったようです。
古代メソポタミア文明の歴史とジッグラト
世界最古の文明発祥地であるメソポタミア(現イラク)は、民族系統が不明のシュメール人によって築かれます。ジッグラトはシュメール起源とされ、古代メソポタミアの大都市を中心に当時20箇所ほど存在したといわれています。ここで、古代メソポタミア文明の年表をご紹介します。
- BC.5300 ウバイド文化(シュメール)
- BC.4900 エリドゥ(シュメール)
- BC.4000 ウルク文化(シュメール)
- BC.3800 ウル(シュメール)
- BC.3100 ラガシュ(シュメール)
- BC.2334 アッカド帝国
- BC.2112 ウル第三王朝
- BC.2004 イシン・ラルサ
- BC.1975 アッシリア(北メソポタミア)
- BC.1894 バビロニア(南メソポタミア)
- ・バビロニア第一王朝
- ・海の国第一王朝
- ・カッシート王朝
- ・イシン第2王朝
- BC.1500 ミタンニ
- BC.625 新バビロニア
- BC.539 ペルシャ帝国アケメネス朝(イラン)
古代メソポタミアの神々
古代メソポタミアでは、多数の神々が崇められていました。主となる一部の神をご紹介しますと、
- エンリル(メソポタミアの神々の王)
- アヌ(アッカドの天空神)
- エンキ(エリドゥの水神)
- イシュタル(エルビルの女神)
- ウトゥ(アッカドの太陽女神)
- シン(月神)
- ナブー(書記の神)
- アッシュール(アッシリアの神)
- マルドゥク(バビロンの守護神)
一説によると、メソポタミアには2,400もの神々が存在していたそう。八百万の神の国の者としては親近感がわきますね。
ドゥル・クリガルズの特徴
今回ご紹介するドゥル・クリガルズは、バビロニア時代のカッシート王クリガルズ1世によって紀元前15世紀頃に建設され、中央の神殿に風、気、地球、嵐を支配する神エンリルが祀られました。3,500年経過し風化した現在でも約52メートルの高さがあり、相当な高さであったことは想像に難くないです。古代はもとより、中世も何世紀にわたってラクダキャラバン隊の「バグダッドへ近付いた」という目安となったようです。
ドゥル・クリガルズは、一番高いこの中心の神殿周辺に9つの低い神殿があり、ほか3つの宮殿、5つの広い居住区を合わせ42万平方メートルに及ぶ広大な都市でした。バビロニア王朝の滅びたあとも、後期カッシートやパルティア、中世のサーサーン朝まで長きに渡って都市機能を有していたようです。この遺跡からは楔形文字タブレットが100枚以上出土しています。