◆あなたと彼らとの間にさしたる違いはあるのでしょうか?
鑑賞後、顔から血の気が引ききって、指先が冷えて悴(かじか)んでいるのを感じた。それはどこまでも無情になれる人間の業に絶望したからでも、正体を知ってしまったあの音が耳にこびりついて離れないからでもない。
あなたと彼らとの間にさしたる違いはあるのでしょうか?とこちらに問いかけるような眼差しを感じてしまったからだ。
この世の誰が、あの家族を非難し石を投げ打つことができるだろう。あの人たちはわたしで、つまり世界の混沌(こんとん)とした現状の中、映画を見るような余裕のあるわたしたちだというのに。