その“関係性”を大いに突き付けてきたのが、水季の図書館の同僚だった津野くん(池松壮亮)でした。定休日だった図書館の前で夏くんが立ち尽くしていると、海ちゃんが津野くんを電話で呼び出して開けさせます。
貸し切りの図書館で大声ではしゃぎまわる海ちゃんと津野くん。さらに津野くんは「一度やってみたかったんです」と言って、夏くんと缶ビールで乾杯します。休日の昼間なのに。
そんな津野くんが、水季が死んだことについて、夏くんにこんなことを言うんですね。
「僕のほうが悲しい自信があります」
そしてその物証であるかのように、海ちゃんが津野くんの家に忘れていったヘアゴムを取り出すのです。海ちゃんと水季とは、津野くんが部屋に呼ぶような関係だったことが示されます。
さらにそのヘアゴムを手に、海ちゃんを呼び寄せて髪を結わい直すことに。夏くんがせっせと作った三つ編みを「ほどいていい?」と言って、そのヘアゴムでポニーテールにすると、「いいね、ふわふわだ」。三つ編みをほどいたので、ポニーテールのテールがふわふわなんですね。
なんと豊かなシーンなんだと、また感心してしまうのです。水季を、ぼんやりとしか思い出せないけれど、それでも美しかったと感じている夏くん。くっきりと思い出せるからこそ、美しいばかりじゃなかったことも知っている津野くん。この強烈なコントラスト。
鮮やかです。
■神の手が、そっと差し込まれる
今回は、水季が一度は中絶を決意しながら、海ちゃんを出産した経緯が明かされました。
7年前、堕ろすために産科を訪れた水季は、そこで妊婦さんや新米ママたちのメッセージノートを読み始めました。そこには、あるひとりの中絶を経験した女性の書き込みがありました。
「(堕ろすか、産むか)どちらを選択しても、それはあなたの幸せのためです。あなたの幸せを願います」
普段は人に影響されないことを自他ともに認める水季でしたが、この女性の書き込みに影響されて、産むことを決意していたのでした。