◆いつしか心が奪われていく

DVもモラハラ行為も、本来はあってはならないこと=非日常であるべきです。ですが、その非日常が続けば、いつしかそれが日常になってしまうのではないでしょうか。傷ついた心はやがて麻痺(まひ)しますが、押し込められた感情や傷は、決してなくならないのです。

毒親から離れ、社会人となった子供は、心の傷から逃れようとします。子供の頃から親には頼れず、迷惑をかけられながらひとりで生きてきました。職場でもその癖が抜けずに、懸命に努力します。

実際、本書に登場する毒親の被害者、娘・浅間奈月も責任感が強く真面目な女性です。しかし奈月の努力もむなしく、仕事は空回りしていくばかり。精神的にも追いつめられ、結婚間近の彼に当たり散らしてしまう日々。

そう、毒親に植えつけられた感情や傷が、よりによって彼に向けて爆発するのです。

自分は被害者だと自覚していながら、いつのまにか加害者になりかけている、こんな悲しい連鎖があるでしょうか。