◆無口な父からの頼み事“母が住むマンションに行ってほしい”

妻子持ちのおじさんに口説かれ辟易
 母が住んでいるマンションには、香織さんは行ったことがなかったといいます。

「そもそも、別居を始めたのを知ったのも全部後からだったんです。就職をするときに住民票を取ったら、見知らぬマンションの住所になっていて。

 問いただしたら、税金の関係で一度、私の住民票を母が住んでいるマンションに移したと言ってました。私も仕事で忙しいし、駅からはバスかタクシーを使わなければならないのもあって、マンションには行く機会がありませんでした」

 ある日、父から連絡が来て“母が住むマンションに行ってほしい”と言われます。

「めずらしく父が『食事に行こう』というので、仕事帰りに都内で会ったんです。そしたら父が、『マンションに他の人も住んでいるかもしれない』と言ってきたんです。父が母に電話をすると、突然、切られたり、『ちょっと待って』という男性の声が聞こえたというんです。思わず私も胸騒ぎがして、母に電話しました」

 香織さんが電話をすると、特に変わったところはなかったそうです。

「でも、よく耳を澄ますと、なんだか母の周りでガサゴソする音が聞こえたような気がしたんです…。私が高校生の時、母は突然、習い事を始めると言い出して夕方から深夜までいなくなったり、今思えば怪しいところがあったんですよね…。それで帰省もかねて母が住んでいるマンションを訪ねることにしたんです」