◆とりあえず一件落着

佳純さんがその女性客にお礼を言っていると、おじさん客の1人も彼女に「男なのに頼りにならなくて申し訳ないね」と声をかけてきました。

「すると彼女が笑顔で『いや助けるのもリスクのある行為だから、男性だからって皆んながやらなければいけないとは思いませんよ。まぁ私はこんな性格なのでつい注意してしまうだけで』と言うと、さっそうと帰っていって…本当にかっこいいなと惚れ惚れしてしまいましたね」

そして、佐藤さんはまた来なくなりましたが「どうせ時間の問題で、またしばらくしたら何事もなかったかのように訪れるんだろうね」とバイト仲間達と話しているそう。

「私を助けてくれた女性のお客さんとはそれ以来あいさつを交わす仲になりました。そのうちまた佐藤さんが来場した際には、私も彼女みたいに毅然(きぜん)とした態度で接したいなと思っています」と微笑む佳純さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】

漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop