◆脳が理解するより先に叫び声が出ていて、自分でもビックリ
――演じるうえで大変だったシーンはありますか?
古川:基本、逃げて叫んで怒って泣いてと、すべての感情表現に体力が必要だったんです。今まで撮影してきた中で、一番疲れた作品だったと思います(苦笑)。
共演したみなさんの中には、演技経験のない方もたくさんいらしたんですけど、それがちゃんと不気味というか、プロの役者が作った怖さではない、自然と滲(にじ)み出る怖さみたいなものもありました。
それから、小道具のスタッフさんがとても凝ったものを作ってくれて、それに対して自然に反応することで怖がったり驚くことができました。
たとえば山のおばの小屋に行ったときに、カーテンをまくると“あるもの”が出てくるのですが、そこは本番まで、私もそこに何があるか教えてもらっていなかったんです。
とりあえず、本番でカーテンを取ってくださいという指示だけだったので、“あるもの”を見たときに、自分の脳が理解するより先に叫び声が出ていて、自分でもビックリしました。そういった工夫を監督がいろいろしてくださっていたと思います。
――完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
古川:すごいカオスでした(笑)。この映画を観て自分が笑うとは思っていなかったんです。
おばあちゃんがおかしくなる感じとか、単純に変だから笑っちゃうというよりは、理解できないことをどうにか笑いでごまかして処理しようとしているのかな、みたいな気持ちで笑ってしまっているのかなと思いました。
――確かに、みなさんにもカオスを体験してもらいたい映画ですね。
<取材・文・撮影/望月ふみ スタイリング/藤井牧子 ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER)>
(C) 2023「みなに幸あれ」製作委員会
『みなに幸あれ』は全国公開中
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi