「この2人は敵じゃないよ、週刊誌を敵とするんやったら」
「どういう経緯でっていうのだけ。僕はやっぱ明日からもちょっと怯えるわけで」
粗品の口調は、終始穏やかだった。自分を尾行し、無作法に張り込んでいた相手に対してだ。
それは、世間をにぎわす“熱愛報道”がどんなふうに作られているのか、そのドキュメンタリーそのものだった。
タレントの自宅住所を突き止め、LINEで募ったアルバイトに簡単にその個人情報を教えている。実際に現場に張り込んでいるアルバイトたちは週刊誌側からの口止めこそ厳密に守って白を切り通すものの、さしたる罪悪感も使命感もない。
情報の公共性、読者の需要、そうした錦の御旗の下で、今日もこのような乱暴な取材行為が日本中で行われているのだ。
この動画は急激に拡散している。おそらくは別のタレントやYouTuberによる後追いも出るだろう。粗品というひとりの芸人が芸能界とマスコミの形そのものを変えようとしている、おそらくはその嚆矢となるはずだ。
(文=新越谷ノリヲ)