◆不倫相手の息子を家に招いた深愛の目的は?

 深愛はなぜ、ハルキを誘い出したのか。彼女の心はあくまでも夏生にあるはずだ。ふみこに近づいたのは、早くよくなってスムーズに離婚してもらいたいからだった。途中からふみこへの共感が圧倒的に強くなってはいるが、当初の目的を忘れているわけではなさそう。結局、自分の存在価値を高めるためにもふみこを利用しているように、ハルキのことも助けたいと思いながら利用することになってしまうのだろうか。

 深愛を信じて、気分転換に髪を切ってもらい、夫の不倫でつらかったことを聞いてもらっているふみこが気の毒に思えてくる。

「深愛ちゃんがいてよかった」

 そう言ってポロリとこぼしたふみこの涙に深愛も動揺するが、彼女は自分もまたふみこを苦しめている存在だという認識がない。このアンバランスな深愛の心のありようが、さらなる混乱を招くのではないだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio