◆自分にとって役を演じることは心の安定剤

映画、テレビ、そして舞台にと引っ張りだこの林さんだが、取材の際には「よろしくお願いします」「ありがとうございます」と逐一応じ、丁寧な姿勢を変えることはない。同時に、「取材はやっぱり苦手なんです」と苦笑いする。逆にどんなに辛い役であっても「役を演じているときは楽しい」のだとか。

「ずっと自分というものが分からなくて、自信もある方じゃないですし、でもいつも言っていることなのですが、役をやっているときは普段とは違うコミュニケーションを取れたりする。僕にとって、本当に“心の安定剤”のようになっているんです」。

『隣人X』では、そんな安定剤から生み出されたとはとても思えないような“痛み”を、こちらにも共有させてくれる林さんだが、その笹の“痛み”にこそ、本作の真理があり、そして希望がある。

<取材・文/望月ふみ 撮影/梁瀬玉実>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi