◆“夫の彼氏”との名場面

 稟久が病院に面会にやってくる。吾良の状態を伝えると、「僕のせいなんです」と語りだす。「ホテル」、「僕が抱いてほしいって言って……」という予期せぬフレーズに、ゆりあは思わず口を歪ませる。

 ここで第1話の名場面がくる。稟久を屋上へ連れ出したゆりあが、缶ジュースを手渡す。

 吾良との恋愛関係について打ち明ける稟久を厳しい眼差しで見つめる。このとき、稟久はベンチに座り、ゆりあはやや離れた位置に立っている。この距離感が素晴らしい。

「どういうことですか?」とたずねるゆりあが近寄る。自分が悪かった云々と陰鬱に話す稟久を彼女はふてくされた表情で見ている。かと思えば、「ダメじゃないですか!」と語気を強める。そしてそのダメの理由が意外だった。

 目の前にいる稟久は明らかに不倫相手。夫との恋愛関係を妻として認めるか、認めないかは別として、「話し合ったほうがいいです」と諭そうとする。普通こんなことが言えるだろうか。ゆりあの大胆不敵さがあっぱれな名場面だった。