◆“純愛のキムタク作品”として

『あすなろ白書』
©柴門ふみ/小学館 ©フジテレビジョン
 山口智子とのキレッキレ、キラッキラな名演を生んだ『ロンバケ』に比べたら、そりゃ華やかさは足りないかもしれない。でも一方で、華やかではない木村拓哉というのも滋味深いではないか。

 合コンでは、1番手の保と純一郎に人気を取られ、自分はいつも3番手。ときにふてくされて、保にイラつくこともある。そのイラつきは、なるみにベクトルが向くからでもある。それだけ彼の心はけがれなく、ピュアなのだ。この純真さとなるみの純愛がうまくクロスしないものかとも思ってしまう。

 藤井フミヤによる主題歌「TRUE LOVE」が、全話を通じて純愛の応援歌になっている。『ロンバケ』以前、あるいは『若者のすべて』(1994年)以降にギラつく前夜、“純愛のキムタク作品”として、本作を慈しんでいたい気がする。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu