だが、まずは110km/hってけっこう速いぜ、と思ったのだ。少なくとも、野球が好きじゃなきゃ110km/hまで出せるようにはならない。きっとこの人は野球が好きだし、草野球チームに参加しているくらいだから日常的に野球を楽しんでいるのだろう。

 そういう人が、ヒジを傷めて思うように野球ができなくなった。おそらくこの人は、趣味を失うと仕事にもハリが出ないというタイプのサラリーマンに違いない。週末の趣味が生き甲斐のサラリーマンなんていくらでもいる。一生に一回、趣味に10万円を使うというのも、えぐい大金というわけでもないだろう。ギター初心者が少し上手くなって、新しくもう1本買うくらいのものだ。

 おかしなことじゃないよなぁ、と感じて。その人にとっては、普通に野球ができることが大切なことなんだろうなぁと。

 次に、美容整形のことを考えた。自分の顔に気に食わないところがあって、美容整形を行うことも、ごく一般的になっている。あまり詳しくないけれど、あごのライン、鼻の高さ、目の周辺、いろいろな手術の方法があるのだろう。

「あのK-POPアイドルと、同じ施術をすることにしたんだ」

 誰かがそう言ったら、それは笑っちゃいけないことだよなぁ。がっつり顔を変えようと思ったら10万円なんてもんじゃないし、それでも憧れのアイドルと同じ顔になれるわけではない。あいかわらず脚も短いし、ダンスが踊れるようにもならない。頭の骨格の大きさまで変えられるわけでもない。あくまで自己満足の世界だ。