◆愛する片割れを想う眼差し
それだけ花岡悟という人物は、特別な存在だった。とはいえ、どうしてこんなにも悲痛な想いがするのだろうか。花岡の訃報から週があけた第11週第51回。誰よりも悲しみに暮れたのは、唯一無二の親友・轟太一(戸塚純貴)だった。
再登場した山田よね(土居志央梨)とカフェで会話する場面。「惚れてたんだろ、花岡に」とよねから言われた轟は最初それを否定するが、瞳の奥は嘘がつけない。よねが言うように、その眼差しは、今も昔もただただ花岡のことを慈しんでいる。
愛する片割れがいない過酷な現実。いったい、自分はこの戦後を生きていけるのだろうか。轟の心の声が漏れ聞こえるよう。
花岡がいないこの場面がもしかすると一番花岡の存在を強く感じさせるかもしれない。その悲痛を唯一共有できるのは、よねでも寅子でもなく、視聴者だけなのだとすると。