社会環境の変化にともない一般的になってきた家族葬。これまでのお葬式と比べて、小規模で執り行うことができ、故人とお別れの時間を大切にできるのが特徴です。この記事では、家族葬の流れや費用の相場、一般葬との違い、さらには家族葬のメリット・デメリットについて紹介していきます。

家族葬とは

明確な定義は持たないものの、家族や親族、友人などで執り行う小規模な葬儀を「家族葬」と言います。あえて参列者の人数を抑えることで、故人とゆっくりお別れができるのが特徴です。また、遺族に負担をかけたくないとして、生前に家族葬を希望する人もいます。家族葬では、人数や場所、スタイルなどを自由に決められます。

一般葬や密葬との違い

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最近になって「家族葬」という言葉をよく耳にするようになりましたが、かつては葬儀と言えば「一般葬」のことを指していました。一般葬のほうが参列者の範囲が広く、近所の人、故人の職場関係、趣味仲間などにも連絡します。

また、「密葬」は近親者のみで行う葬儀のことを指します。ただし、後日に本葬、社葬、お別れの会など、故人との時間を別途設けることを前提に行われるのが一般的です。

家族葬の流れと費用相場

家族葬の流れは、おおむね一般葬と同じです。ご遺体の安置後、通夜、葬儀・告別式、火葬までを2~3日かけて行います。ただし、家族葬ではその規模を自由に決められるため、参列者のことを考慮して通夜を行わない場合もあります。

家族葬の費用の相場は一般に100万円前後と言われています。ただし、参列者の人数や会場によっても費用は大きく変わるため、葬儀社によっては30~40万円で行っているところもあります。

家族葬が最近増えている理由

社会環境の変化により、家族葬が増えていると考えられています。かつては地縁・血縁のつながりが強く、ご近所の方々をはじめ、故人の仕事関係者、遺族の知人や職場関係者など、葬儀の案内を出す先は多岐にわたりました。

しかし、現在では親戚づきあいや近所づきあいなど人間関係の在り方が変化してきています。少子高齢化や晩婚化も影響していると言えるでしょう。そういった理由により、「大げさな葬儀をしなくていい」と考える人も増えているようです。

加えて、最近では新型コロナウイルスが猛威を振るっていることがあります。人が集まればそれだけ感染リスクが上がってしまうため、感染防止対策として葬儀を小規模に執り行いたいという人もいます。形式を自由に選べる家族葬は、そういった時代の流れに即していることから多くの人に受け入れられているのです。

家族葬のメリット・デメリット

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家族葬のメリットとデメリットを簡単に確認しておきましょう。

メリット1:希望に合った葬儀を執り行える

家族葬は葬儀の内容を自由に決められるのが大きな特徴です。そのため、故人の遺志や遺族の希望を形にしやすいというのがメリットになります。

メリット2:葬儀の準備をする時間を短縮できる

葬儀は一般に、亡くなった日の翌日に通夜、翌々日に告別式が行われるのが通例ですが、急なお別れで気持ちの整理がつかないまま、さまざまな準備を行うのは精神的負担も相当なものになります。家族葬では家族や親族が中心となるため、大掛かりな準備が必要ありません。

メリット3:故人とのお別れの時間を大切にできる

一般葬では参列者も多く、各方面に案内を出したり、葬儀に来られる人の対応をしたりと、何かと忙しいものです。一方、家族葬では参列者を限定するため手間も少なく、故人とのお別れの時間を大切にできます。

デメリット1:一般葬より香典の総額が少なくなる

家族葬は規模が小さいぶん葬儀の費用自体は抑えられるものの、同時に香典の総額も少なくなります。そのため結果として、「葬儀費用が多くかかる」という場合もあるので注意しましょう。

デメリット2:案内を出さないことがトラブルの原因になることも

葬式に参列できなかった人が、あとになって「なぜ呼んでくれなかったのか」と申し立てをしてくるケースもあります。たとえ事前に「家族葬のため、参列は控えてほしい」と案内していたとしても、当日になって葬儀に参列する人がいないとも限りません。このようなリスクは一般葬よりも高くなるので注意が必要です。