◆やると決まった以上は、もう楽しむしかない

片岡愛之助さん
――共感とは、やはり芸の道について、ということでしょうか?

愛之助:そうですね。僕も歌舞伎が好きなものですから、そういう意味ではいろいろなことを追求して、試してやってみたいなという気持ちはあります。なので彼の気持ちは分かるほうだと思いますね。

――洋画の日本語吹替えは初めてではないと思いますが、また挑戦しようと思われた理由は何でしょうか?

愛之助:それはもうミニオンですから、断る理由がありません(笑)。台本を見て初めて「大変なものを引き受けた!」と思うのですが、楽しみでもあります。生みの苦しみと言いますか、難産であればあるほど、でき上がったものは面白くなると思うんです。それは、この作品に限ったことではないでしょうけれど。そしてやると決まった以上は、もう楽しむしかないですからね。

――マキシムのライバルはグルーですが、ご自身のライバルはいますか?

愛之助:ライバルは常に自分自身。自分との葛藤ですよね。毎日「もういっか」と思えば、それまでじゃないですか。僕は歌舞伎に日々出ていますが、「もういっか」と思った瞬間に、どんどん質が下がっていく一方なわけです。それを今日よりも明日、明日よりも明後日と、せめて一段ずつでもどうすればもっと良くなるのか、面白くなるのか、お客様が喜んでくださるのか考える。お客様の気持ちに立つこと、それを俯瞰で見ている自分がいることが重要で、自分との戦いを続けることが大事なんです。

僕らは正解がない仕事。だから誰がジャッジするのかというと、それはもうお客様なんです。そのお客様も十人十色で、9人が面白いと言っても、1人がそうじゃないと言うことがある。満場一致で素晴らしいものを作ることとは、かなり難しいと思うんです。

つまり、正解をずっと探し続けるということなんです。「これでいいのか?」「違うだろう?」と、自問自答ですよね。それが一生続いていくわけですから、よく言えばやりがいのある仕事。ゴールがない、正解がないですが、常に探究して一生の仕事と言われるものでもあります。だからライバルは自分自身、ですかね。