◆同潤会アパートの多くは東側の下町に集中

螺旋階段
「清砂通アパート」1号館階段室のアール・デコ様式の手すり飾りが優美なライン。アール・デコ様式とは、幾何学図形をモチーフにした簡潔で合理的な表現が特徴で、エンパイアステートビルなどが有名だ
 都内に建てられた同潤会アパートの分布図を見ると、その多くは東側の下町に集中している。木造住宅が密集していたこの地区は震災の甚大な被害を受けていたからだ。

 下町にあった同潤会アパートのなかには、東京大空襲で内部が全焼した住棟も少なくなかった。清砂通アパートでも空襲によって多くの住人が犠牲になったという。

 清砂通アパート1号館には優雅なラインを描いた螺旋階段があったが、そこの手すりに付いているはずの笠木がなかった。笠木とは手すりなどの上部にかぶさる仕上げ材だが、木製だったので燃えてしまったのである。

〈清砂通(きよすなどおり)アパート〉

Architect Data

・所在地:東京都江東区白河、三好

・設計:同潤会建設部建設課

・施工:大林組

・竣工年:昭和2年~昭和4年(1927‐1929)

・解体年:平成14年(2002)