◆論点をすり替えた「論破ブーム」への皮肉?

 また、謹慎を命じられた渚が自宅近くのゴミ収集場にゴミを捨てた際にも一悶着あった。ペットボトルのラベルをはがさずに捨てていた隣人女性・並木(安藤聖)を目撃し、そのことを注意。すると並木は「そんなだからパワハラで訴えられるんですよ」と逆ギレ。渚がショックを受けていると渚の父親・ゆずる(古田新太)が登場し、「そんなんだからってどんなだ?」「ほんの一部分だけ見て、切り取り、パワハラだなんて決めつけるな!」と助太刀に入る。そして、ミュージカルが開演して「そうだとして、あんたがゴミを分類しなくていいってことにはならない」と病気で満身創痍になりながらも娘のために1人、もとい独りで歌い続けた。

 昨今は論破ブームだ。ただ、論破と言っても論点を上手くすり替え、いかにも勝っている感を出すことが勝敗を大きく分けるポイントになっており、もはや論点を争うことは二の次とされているケースが目立つ。まさに並木のように論点をずらして、自身の非を認めず、反省することも渚と向き合うこともしない姿勢を見せていると、“論破”がコミュニケーションの一つの型になりつつある現在を皮肉っているようにも思えた。

 いよいよ残り1話となった『不適切にもほどがある!』。毒あり、笑いあり、感動ありの本作がどのような大団円を迎えるのか楽しみに待ちたい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki