◆子どもを持つことへの恐れや、親になることの不安

中川:奈月を描く際には、彼女の内面の葛藤や、生きづらさを感じている人々の感情を正確に表現することに注意しました。また、子どもを持つことへの恐れや、親になることの不安を抱えている人々の心情も描きたかったです。自分の生きづらさや、親からの影響を受けていることを認識した上で、同じ過ちを繰り返さないようにしたいという思いは、多くの人が共感できるものだと思います。実際、とても多くの方が、苦しんでもいます。

加害者が毒親にならないようにしようと思い、これらの葛藤を周りに共有したりする時に、「親もひとりの人間だし、許してあげたら」とか「いつまでも親のこと意識しすぎじゃない?」といわれるようなこともよくあります。しかし、自分の加害者性を認めるからといって、自分の傷つきや痛みがなかったことにはなりません。そして、実際、人を傷つけてきた歴史がなくなるわけでもありません。それがなくならないことを認めるからこそ、その痛みを引き受けてケアを始めていくことができるからこそ、きっと被害者から加害者になってしまった人の、その先の変容があるのだと思っています。