◆抑えられない怒りは、弱い自分を守る防衛システム

――今作のもう一人の主人公である娘の奈月。彼女は鳥羽からのモラハラに影響され生きづらい人生となっています。彼女を通して伝えたかったこと、また彼女を描くときに気を付けた点など、奈月について思うことを教えてください。

漫画・龍たまこさん(以下、龍):奈月はパッと見激情型で、怒りっぽい、強い女性のように見えます。ですが、実際その怒りは弱い自分を守るための防衛システムみたいなものです。外側に向けた攻撃性と、内側の繊細さのギャップに気をつけて描きました。

イメージとしては、人間に捨てられた手負いの野良猫みたいな。基本的にとても人が怖いんですよね。信頼してしまって本当に大丈夫なのか? 弱みを見せても大丈夫なのか? 攻撃されないのか? 毒親家庭育ちで、常に緊張状態で生きてきた彼女のサバイバル術が、あの「怒り」だったと思います。

その怒りが婚約者の陽多や部下に向けられるわけですが、「女性からのモラハラは許される」というメッセージにならないように、気をつけました。