■Don’t think.FEEL!

「考えるな、感じろ」

 32歳の若さでこの世を去ったジークンドーの大師匠であるブルース・リーが1973年の映画『燃えよドラゴン』でおっしゃっていた言葉です。ちなみにリーは同作を全編アフレコで制作しており、アクションだけでなくセリフの聞こえ方にもこだわっていたことがうかがえます。「フィイイイイイイゥ(FEEL)」のところのリーの声、初めてこの映画を見たときからずっと耳に残っているんです。

 さて、『くる恋』(と略すんだね)の話。

 前回まで、記憶を失ったまこちゃん(めるる)は考えることに執心してきました。手元に残ったメンズ用の指輪を渡すはずだった人は誰だったのか、自分が働くべき職場はどんなところなのか、自分はどんな人間だったのか。本来、美しさを求めるだけの仕事であるはずのアクセサリーショップに身を置いたあとでさえ、指輪そのものの美しさよりも、その意味について語られてきました。

 大人として生き直すことになったまこちゃんが、社会人として意味から考え始めることはごく自然ですし、生きていくために意味は絶対に必要なものです。もとより、過去のまこちゃんも自分の部屋には意味のないものを置かないし、着る服も「地味目」とか「デート用」とかの意味で選んでいたし、花屋の男(瀬戸康史)と付き合っていたのに花も全然好きじゃなかった。その花屋の元カレの言葉を借りて、ドラマは過去のまこちゃんを「色鉛筆の12色しかないと思っている人」と定義付けます。