■バカリズムを激昂させる、という見どころ

 今回の脚本家はオークラさん。主演のバカリズムとは同時期に都内のお笑いライブで切磋琢磨していた盟友です。それだけに、オークラさんはバカリズムにやらせたいシーンというものがあるようで、第1話では「刑事と言えば全力疾走」とでもいわんばかりにバカリズムが短い手足で夜の街を激走するシーンが描かれました。あのころは、楽しいドラマになりそうだなぁなんて予感を抱いたものです。

 今回は、森野が激昂する場面がありました。愛する姪っ子をアリバイ工作の道具にされ、怒りに震える森野。目ん玉をひん剥いて犯人に怒号をたたきつける姿には迫力がありました。

 クールで感情を表に出さない刑事が憤怒するシーンといえば、思い浮かぶのは今ちょうど再放送している『警部補・古畑任三郎』(同)の木村拓哉の回です。観覧車を爆破したキムタクの身勝手な動機を聞いた古畑がキムタクをビンタした場面、「おお……」となったのをよく覚えています。

 オークラさんがバカリズムの憤怒を表現したかったんだろうな、というのはすごくよくわかります。

 でも、誠さんの犯行動機は、そんなに怒るような話でもないんですよね。誠さんはトンネル事故の原因を作った2人に天誅を下したという、森野はそれを「天誅ではなく、ただの復讐だ」と言って怒るわけですが、ただの復讐って動機としては全然ありうる話なんです。むしろ天誅より復讐のほうが、ミステリーとしては「犯行動機の純度」が高い。悲しいけど、「復讐じゃないか!」なんて怒るのは変な話なんです。