■天誅か復讐か、それが問題だ

 今回の事件は、ジャーナリスト・誠くん(野村)が県議会議員と建設会社社長を拳銃で殺害。この2人のおじさんは10年前に崩落事故を起こしたトンネルの建設にかかわっていて、談合と手抜き工事のせいで誠くんは両親を亡くしていたのでした。

 第1の事件現場は神奈川県内の高級クラブが入った雑居ビル。被害者はエレベータの中で頭を撃ち抜かれて死んでおり、その場には「令和のねずみ男」からの犯行声明が貼り紙されていましたが、こちらは特に捜査の様子は描かれません。神奈川県警の管轄なので、警視庁の刑事である森野には関係がないからね。

 第2の事件は都内のホテルの一室。ジャーナリストの誠くんは建設会社社長の行動パターンを調べ上げ、金曜の夜には愛人とこのホテルで過ごすことを突き止めていました。そこで誠くんはホテルのポーターの制服を調達し、社長の部屋で犯行に及びます。その際、誠くんは彼女とスマホの位置情報を共有することで、死亡推定時刻には大阪に向かう夜行バスの中にいたというアリバイを作り上げました。

 この誠くんの彼女が森野の姪っ子だったことから森野が事件にかかわり、いつものように冴えた推理で事件を解決に導いたのでした。

『イップス』のレビューでは、主にミステリーとしての謎解きの出来についての話をしてきましたが、今回はまあ、それはいいや。おもしろくはなかったです。