■完全に食われたけどな

 がんばってたから、ドラマが成功というわけではありません。

 いろんな赤楚くんを見せたいという目的自体は果たされていると思いますが、その「いろんな」の引き出しが少なかった。おおまかに、3つくらいしか表情がないんです、赤楚くん。

 結果、赤楚くんの芝居を引き出すために配置された大御所たちの実力を、まざまざと見せつけられることになりました。

 第3話では、余貴美子の激情が見られました。笹野高史に揚げ春巻きで唇を凌辱されたかと思ったら、逆ギレした息子に掌底連打からのマウントポジション。もう食っちまうんじゃないかという形相で息子に馬乗りになったシーンは、このドラマのひとつのハイライトでした。

 笹野高史はずっとすごかったけど、最終回は特にでしたね。大友先生にベッドに拘束されてジタバタしたり、失脚することが確定してニヘラニヘラ笑ってるかと思ったら、つい体育座りになっちゃったり、威厳と奇人を行き来するダイナミックなお芝居で作品の“格”を確実にひとつ、上げていたと思います。