◆女子たちの進路
先述したように、マッチョな文化に適応できず離れていった男子生徒もいる。「勝ち残った男たち」が作る地元の空気は、女性だけでなく彼らにも息苦しいものだろう。
では、女性はどうしているのか。ミユキさんは自身のことを、こうふり返る。
「兄がいるのですが、身体がちょっと弱くて。それもあって母は、将来のために少しでもいい大学に行かせないと、と非常に教育熱心でした。教育にかけられるコストの多くは兄に回され、私はずっと『家から通える学校にしなさい』といわれてきました」
似たような境遇のクラスメイトは少なからずいて、「女の子が大学に行ってもしょうがない」と言われた友人もいる。ミユキさんは学校図書館司書として女子校に勤めたこともあるが、そこの生徒たちも親や周囲の大人から同じことをいわれていた。
そんななかで自分の進路を決め、資格を取り、子どものころから憧れていた職業に就いたミユキさんだったが、図書館司書は決して待遇がよくない。
専門性の高い仕事でありながら非正規雇用が多く、賃金も低いという報道を、昨今は頻繁に見聞きするようになり、なかには、その手取りがたった18万円、という記事もあった。
図書館員のうち8割は、女性だ。女性が多いから賃金が低く設定され、賃金が低いから男性のなり手がいない。悪循環が起きている。