◆人間関係の「嫌なこと」を綺麗にしようとするときつい

漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々
――そういう意味では今回の映画は漫才協会の広報的な意味合いとして、一般の人に漫才協会や東洋館のお笑いの魅力が広まると同時に、漫才師を目指す若手に漫才師のリアルを見せるという意味もありますね。

塙:そうですね。なかなかインパクトのある人たちですから(笑)。芸人人生、何が起きるかわかりません。相方が突然亡くなることだってあるし、事故に遭うことだってあるし、それはどうなるかわからないですよね。だけど長い目で見た時に、関係性がどういうふうになっていくのかというところを観てもらいたいですね。

おぼん・こぼん師匠なんか特にそうですけど(笑)。ただ、おぼん・こぼん師匠は辞めなかったことが一番すごいですよね。一度も解散していないんですよ。それはおぼん・こぼん師匠がすごく誇れるところで、どんなに仲が悪くなっても解散しなかった。今の若手は相方の一言で不満になって爆発しちゃって、もうネタ作りたくないとか、あいつのためにネタ書きたくないとかって、けっこうあるんですよ。僕もよく相談されるんですけど。

衝突することは当然あるわけで、漫才師はそれを避けられないわけですよ。だから、相方がいかに大事なのかということも本当はわかってもらいたいです。漫才はふたりでしかできない。それが絶対に分かる時が来るからって、僕はずっと思っていますけどね。

――おぼん・こぼん師匠は以前「水曜日のダウンタウン」でかなり追い込まれていましたが、この映画で描かれているその後の姿は確かに感動的でした。

塙:そうなんですよ。人間関係もそうですが、もう旦那が嫌だとかよくあるじゃないですか。上司が嫌だとか。誰もが嫌だって人がいるじゃないですか。でも、そこを綺麗にしたくて、いろいろ動いているほうがたぶんきついんですよ。

それって人間の基本ベースなんですよね。だからあいつが嫌だとか思う時って、実は自分がすごい健康な状態なんだって思ったほうがいいんです。漫才協会の会長になったらなおさら思います、めちゃくちゃみんなわがままなんですよ(笑)。