恋人がちっちゃくなるという超常現象をすんなりと受け入れる地盤を「複雑な家族構成」という設定であらかじめ作っておくということをやってるわけですね。こういうとこ、うまくやってるなと思う。

 一方、戸惑うしかなかった南くんは部屋にひとり残され、ママの掃除機に吸い込まれそうになったことで、いよいよ自分が絶対的な弱者になってしまったという現実を実感することになります。車にはねられそうになっても、キックボードから振り落とされそうになっても、そのときは「ちよみに会いに行く」という強い思いがあったから怖くなかった。でも、いざこうして掃除機に吸い込まれそうになってみたら、やっぱり怖い。この世界が怖いし、デカいちよみも怖い。ゴジラか、進撃の巨人みたいだ。

 その南くんの言葉に傷つくちよみでしたが、「ダメダメ南くんも好き」と思い直すことになります。

 南くんに訪れたアイデンティティの崩壊は、ちよみの慈愛によって回復に向かうことになりました。そして、ちよみの胸ポケットに入れられて背中におっぱいの感触を感じたことで、こちらも「今楽しいからOK」という心の安定を獲得することになるのでした。